神保町交差点のすぐ隣という絶好の立地。じつはここ、岩波書店発祥の地で、その前身は古書店だったとか。大正時代に出版業に進出し、独自の“岩波ブランド”を確立。現在の岩波ブックセンターがこの地に建ったのは、柴田代表に言わせると「最近のこと」だそうだ。新刊書籍から雑誌に至るまでそのセレクトは極めて独特。谷中・根津・千駄木の地域ミニコミ誌『谷根千』のバックナンバーをこれだけ揃えている書店も珍しい。もちろん岩波書店から発刊された出版物の充実ぶりは他の追随を許さない。
「品揃えは硬派といえば硬派ですね。とにかくうちのカラーに合わない本は置かないんです」(白井店長)
「そうそう、あの“セカチュー”も置かなかったんですよね、頑なに(笑)。たぶん並べれば売れるのに(爆笑)」(成田さん)
そんな岩波ブックセンターの客層は、40〜50代以降のいわゆる熟年層が中心。著者や編集者が足を運ぶことでも知られ、待ち合わせ場所にも利用しているらしい。また、マニアックな注文をする方が多いのが特徴。それに応える品揃えを誇っているので、めったに売れないような高額で希少な本も在庫している。「いろいろな発見ができるユニークなお店です。敷居が高そうに思えるかもしれませんが、若い人にもぜひ来ていただきたいです」(白井店長)独特の世界観を持つ“岩波ワールド”。一度入ったらなかなか出られないかも。
流行に左右されない独自のセレクションが随所に光る平積みのスペース。硬派です!
地域限定のミニコミ誌が並ぶ雑誌のコーナー。ここにも独特の“岩波ワールド”を展開。
店内の壁に飾られているミレーの「種まく人」。岩波書店のシンボルマークでもある。
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「パール判事」
「東京裁判で被告人全員無罪を主張したパール判事を扱ったノンフィクションです。昨年の夏に発売されて大きな話題を振りまきました。とても読みやすいですよ」
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「年表 昭和史 増補版」
「いわゆる資料的な本ですが、当店ではコンスタントに売り上げがある定番商品のひとつです。謙虚に『昭和史』といいながら、平成まで網羅しているのがちょっと嬉しいです(笑)」
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「GHQ焚書(ふんしょ)図書開封」
「新刊として店頭に並べたら、あっという間に売り切れてしまったのを鮮明に覚えております。戦後の日本になさそうであった思想統制……、多様な思惑が見えてくる一冊です」
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「甘粕正彦 乱心の曠野(こうや)」
満州の裏側を牛耳った稀代の謀略家・甘粕正彦の波乱に満ちた生涯を綴る大河ノンフィクション。新資料・新証言を随所に織り交ぜながら、従来とは全く違った甘粕像を描き出す。
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「川の地図辞典 江戸・東京/23区編」
江戸・東京に佇む川、堀、用水、運河など、約400を網羅した大人のための調査散歩ガイドブック。「この川はどこから流れてくるのか」そんな素朴な疑問に答えてくれる一冊。
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「データブック 貧困」
日本はもとより、アジアや世界における貧困の実態を浮き彫りにするデータブック。刻々と移り変わる世界情勢のなか、格差社会がいかにして広がっているかを考えさせられる。