神保町紳士録Vol.7 神田古書店連盟会長 中野書店 中野智之さん「東京でもまれにみる『奇跡の街』」
古書センターができたのをきっかけに、親父が神保町に店を出したのが約30年前。その前後から神保町にちょこちょこと顔を出すようになりました。この界隈の本屋さんは地元出身の方が多いのですが私は違うんです。もちろん明治大学に通っておりましたので、3年生からは駿河台校舎なのですが……、当時は学生運動の末期で、毎日のようにロックアウトやらデモ集会、授業がないんですよ。だから学校に行かずに芝居ばかり観ていました。もっとも専攻が文学部演劇学科ですから、劇場に行くのはそんなに不真面目な話じゃないかな(笑)。
同学年には田中裕子さんがいました。当時に比べて変わったのは、芝居の立て看板をあまり見かけなくなったことでしょうか。もっと賑やかにしてほしいですね。
漫画というと特殊なジャンルと思われるかもしれません。でも、私にとっては大衆文学の一部。至極当然なんです。戦前から人気を博していた少年向けの小説にとってかわったのが漫画。江戸川乱歩の「少年探偵団」から手塚治虫の「鉄腕アトム」へ。とても自然な流れでしょう。
ついでに古書に詳しくなる秘訣をお教えいたしましょうか。それは、ジャンルを問わずに「つながり」をたどること。たとえば今年で没後50年という節目を迎える永井荷風。この人が師事したのは歌舞伎劇作者の福地桜痴、その桜痴と親交があったのが坪内逍遥という具合です。作家の周辺を細かく調べると、趣味等を通じた意外な関係も発見できるし、無名ながらじつに味のある人物も出てくる。面白いですよ。
会長といっても順番が回ってきただけで、決して偉いというわけではありません(笑)。神保町は都会のまん真ん中にあって、昔ながらの街並みが残っている珍しい街。大戦中、ここに数々の貴重な書物があるのを知り、米軍が空襲を外したという伝説も残っています。商店が多かったせいか高層ビル化も最小限にとどまっており、人の温もりが肌で感じられるんですね。
昨年、さまざまな方のご協力をいただき『本と街の案内所』もオープンいたしました。古書店だけでなく、ここには足を向けたくなる魅力的なスポットが沢山あります。ぜひナビブラを参考にして(笑)、遊びに来てください!きっとお気に入りの場所が見つかることでしょう。「いつまでもいたくなる街・神保町」、ここで過ごす毎日は本当に楽しいですよ。
神田古書センター内。2階は漫画部、3階は古書部。漫画部では、手塚治虫や藤子不二雄といった人気作家の絶版漫画を、古書部では古典籍・文芸稀覯本・肉筆物などを扱っている。5階のらくごカフェに行く前に、是非お立ち寄りを!
住所/神田神保町2-3
神田古書センター2F
TEL/03-3261-3528
営業時間/平日10:00〜18:30
日・祝11:00〜17:30
定休日/第3日曜
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