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神保町に来れば本物に会える!!
誰もが一度は見たいと思う有名な古書はもとより、多彩なジャンルの「お宝」が眠っている本の街・神保町エリアは、街全体が博物館や美術館さながら。しかも、商品として、手にとって見られる物も多々あるとか。当コーナーでは、そんなミュージアム級の逸品を厳選してご紹介いたします!(文・ナビブライター 青木伸広)
Vol.2 中野書店「手塚治虫初期コレクション」 数々の名作を生んだ天才マンガ家・手塚治虫 『来るべき世界』『メトロポリス』『鉄腕アトム1〜3巻』ともに手塚治虫の初期作品を代表する貴重な逸品

 日本中の少年たちを虜にした『鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』『ミクロイドS』をはじめ、数多くの少女ファンを集めた『リボンの騎士』や『ふしぎなメルモ』、そして大人も楽しませた『ブラックジャック』や『アドルフに告ぐ』『火の鳥』などなど、じつに幅広いジャンルを手がけた不世出のマンガ家・手塚治虫。日本に本格的なストーリー漫画を根付かせた大功労者で、藤子不二雄、赤塚不二夫、石森章太郎といった錚々たるフォロワーに多大な影響を与えたカリスマだ。

その数ある名作の中でも古書として特に希少価値が高いのは、単行本デビュー作となった『新宝島』や、初期SF3部作といわれている『来るべき世界』『メトロポリス』『ロストワールド』などの、昭和20年代から30年代に出版された、いわゆる初期の作品群。日本マンガ史を彩る貴重な逸品ぞろいだ。

平成20年は手塚治虫生誕80年という記念すべき節目の年。日本が世界に誇る芸術家が描いた、「珠玉のストーリー」と「未来予想図」をご覧あれ!

日本が世界に誇るマンガの神様
中野書店の中野智之さん

中野書店の中野智之さん

僕らに大切なことを教えてくれた手塚漫画

 いたるところにマンガやアニメがあふれ、すっかり文化として根付いている昨今。もはや「マンガを読むこと」は子供たちだけの楽しみではなく、国民的な娯楽となった。いや、そればかりか、世界中が日本のアニメ、いわゆる「ジャパニメーション」に注目。しばしばハリウッド映画の原作にも使われるほどの隆盛ぶりを見せている。この世界に誇る「新しい日本文化」の礎を築いたのが、他ならぬ手塚治虫だ。

 「手塚がデビューした昭和20年代は、リアリティを追及した私小説や社会主義文学が全盛でした。そんな中、手塚治虫はマンガという手法で大いにロマンを語った。これは、たとえば吉川英治が『宮本武蔵』で描いたような、日本人に脈々と受け継がれてきたものです」と語るのは、昭和50年に中野書店漫画部を立ち上げた中野さん。古書業界で「絶版マンガ」という新しいジャンルを確立させた人物だ。

「手塚作品はSF的な話が多く、新しいことを描いているイメージがあります。しかし、斬新な手法を用いながら、昔ながらの人情や愛、そして冒険心を描いているのが、読めば読むほどわかるんですね。」

  

 そう、手塚治虫は、『鉄腕アトム』の主人公アトムや『リボンの騎士』のサファイア、『ジャングル大帝』のレオを通して、今も変わらぬ「古き良き日本人の心」を僕らに語りかけた。だから、手塚作品はいつまでたっても古くならないのだ。

あの頃の「ドキドキ感」を思い出す!

 「お客さんの中にはマニアックな方もいらっしゃいますが、ごく普通の若い方たちもたくさん来ますよ。自分が生まれる前の作品を興味深い目で見ているようですね。それから多いのが年配の方。子供の頃に読んでいた本を探しにいらっしゃるんですね」

 かくいう中野さんも、子供のころに手塚マンガの大いに影響されたクチだとか。

 「こんな上手なストーリーテラーはいません。ワクワクさせ、うっとりさせ、そしてポロポロ泣かせる……。読者の感情を意のままにコントロールするといっても過言ではないでしょう。手塚治虫は、歴史に名を残す小説家や文豪と呼ばれる方々と比べても遜色のない、偉大な作家だと思います」

 前述の初期SF3部作や大人気を誇ったヒット作をはじめ、ゲーテの文学作品に挑んだ『ファウスト』、時代物の『まんが平原太平記』、劇画を取り入れた『化石島』、『リボンの騎士』の原案となった『奇跡の森のものがたり』など、お宝級の手塚作品がズラリと並ぶ中野書店。なかには1冊100万円を超える高価な作品もあるが、冒頭で紹介した『鉄腕アトム』の1〜3巻など、5万円程度で購入できる作品もある。

 「ぜひお手元に置いて、お子様やお孫さんと一緒に読んでください。僕らが夢ばかり見ていた『あの頃』を思い出すために、そして『こんないいマンガがあったんだよ』と次の世代に伝えていくために」

 ひと言ひと言、自分の言葉を噛みしめるように話す中野さん。キラキラした瞳は、まさに夢見る少年そのものだった。

「リボンの騎士1〜3巻」

▲ 「リボンの騎士1〜3巻」
 宝塚歌劇団をイメージして描かれたといわれている『リボンの騎士』は、少女マンガの原点となった作品として有名。TVアニメ化されて大ヒットし、ミュージカルとして舞台で何度も上演された。

「吸血魔団」

▲ 「吸血魔団」
 昭和40年代に公開されて大ヒットを記録した、アメリカのSF映画『ミクロの決死圏』のネタ元になったといわれている作品。

「新宝島」

▲ 「新宝島」
 記念すべき手塚治虫の単行本デビュー作。初版本で美品なら4〜500万円の値がつくこともある超稀少本。

「手塚」と「虫プロ」の検印

▲ 「手塚」と「虫プロ」の検印
 最近は廃止している本がほとんどだが、以前は一冊ごとに検印が押されていた。左は初期のころの『手塚』という判子。右は後年に使われた『虫』という文字をデザインした手塚のプロダクション「虫プロ」の印。

表紙の裏に書かれたメッセージ

▲ 表紙の裏に書かれたメッセージ
『来るべき世界』の表紙の裏に書かれた英語のメッセージ。英文かと思いきや、よく見ると日本語のローマ字表記。他にも、手塚作品の表紙裏には遊び心が隠されてたものが多くある。

中野書店漫画部
神保町交差点からほど近い、古書センターの2階にあるマンガ専門店。手恷。虫や藤子不二雄といった、人気作家の絶版マンガがズラリと揃う充実のラインナップは業界屈指。セル画・画集・マンガ関連のグッズ等も豊富で、レア本を求めて海外からやってくる外国人のお客さんも多いとか。ちなみに隣は有名カレー店の『ボンディ』。3階は中野書店古書部。
中野書店外観