「コーヒー」「読書」「散歩」――これが私の生活に必要なもの。この3つが一度に味わえる場所がカフェなんです。でもどれも、人生の必需品じゃないでしょう(笑)。その無駄っぽいところが好きです。カフェは一人の時間を過ごす場所。散歩する街々でカフェに出会い、少しずつ探していくうちにいつの間にかコレクションになってしまった感じですね。でも本当はこの質問をされるたびに答えがいつも違うんです。それもカフェの魅力なのかもしれませんね。
私にとってカフェは“読書と勉強の場”。カフェで旅の計画を練るのがとても楽しいので、旅の本を読むことが多いです。それから今、密かにやっているのが英会話の勉強。リベンジなんです。ipodとテキストを持ち込んで、コソコソと(笑)。10人くらい座れる大テーブルのあるカフェで、2,3人お客さんが座っている状態が一番居心地がいいですね。一人でいるのに一人じゃない、カフェの良さを味わえる気がします。私の場合、1ドリンクで30分、それ以上長居するときは追加で注文するようにしています。
カフェブームが落ち着いてきて、どのお店もある程度のクオリティを保ちながら、個性を出そうとしていますね。たとえば、パンケーキ専門店とか、健康を意識したマクロビ系のカフェとか。今後もこの傾向は続くと思います。私自身はレトロな昭和喫茶も大好きなので、新旧どちらのタイプのカフェも密集している神保町のような街には、とても魅力を感じます。自分の知らない世界と出会えるチャンスでもあるので、若い人にも“今どきカフェ”だけじゃなく、歴史のある個人経営の喫茶店にももっと足を踏み入れてほしいですね。
今まで全国のカフェを800軒以上訪れていますが、これからも「カフェ版・松尾芭蕉」を目指して(笑)、まだ知らないカフェを訪ねてみたいですね。それから海外の、特にハワイのカフェの本を出したいと思っています。
【文と写真】 川口葉子
【出版社】 青山出版社
【定価】 税込1680円
※全国の書店やAmazonで好評発売中
「和ってなんだろう?」をテーマに、愛用のカメラと赤い手帳を持って旅した日本各地の魅力的なカフェたち。東京を中心に北海道から沖縄までの59軒を、豊富な写真と文章に地図を添えて紹介しています。
旅を通して見えてきたのは、日常生活に深く根ざした和のおもてなしと、21世紀ならではの「洋」と組み合わされた新しい「和」のかたち。たとえば、古都の町屋に新しい息吹をふきこんだカフェで、北欧モダンのカップに注がれた香り高いコーヒーに出会ったり、潔くシンプルな現代美術館のようなたたずまいのカフェで、伝統を受け継いだ素朴な和菓子に出会ったり。それらの総体から、暮らしの中の新しい和のかたちがごく自然に浮かび上がってきました。