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東京古書会館の自動ドアをくぐり、おそるおそる階段を地下へ下ると……
ほんのりとしたコーヒーの良い香りと、壁一面に並んだたくさんの古書!
「アンダーグラウンド・ブック・カフェ」と呼ばれるこの地下室では、古書の展示販売をはじめ、雑貨フェア・ワークショップ・フォトギャラリーなど、複合的なイベントが随時、催されていています。
私が伺った5月28日は、「地下室の古書展」と呼ばれるトークショーの開催日。神保町に闇が降りた午後7時すぎ、小説家の京極夏彦さんを迎え、初夏の妖怪対談がはじまりました。 |
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まず驚いたのは、ゲストと客席の至近距離! こんなに近くで、大作家のお話が聞ける機会など、めったにありません。 しかもトークは一環して、とても和やかなムード! まるで"友人宅に集まっての趣味談義”に参加しているようなアットホーム感です。
「妖怪や幽霊は、民俗学でも動物学でも人物学でもない。どこにもおさまらない”異なもの”だよね」と話す京極さん。東さん、天野さんと共に、各々が持ち寄った"お宝・妖怪本"を紹介しながら、「昔の妖怪本はうそつき!(笑)アマビコという妖怪が、間違えてアマエビと印刷されていたりね」とユーモアたっぷり! 会場は終始、笑いに包まれます。
しかし残念なことに、こうした妖怪・幽霊の本は、今はほとんど手に入らないのだそうだ。「名著と呼ばれた本でさえ、今はほぼ絶版状態。古書でも手に入らないものが多い。それらを、どうにか今の時代に蘇らせることはできないか…と、僕は”読者代表”として中公文庫にお願いしたんです」と京極さん。そして、自らアドバイザーとして関わり、完成したのが中公文庫BIBLIO「〈異〉の世界シリーズ」全14冊。
「せっかく今の時代に再版するのだから、著者の思いを変えることなく伝えたい。プラス、今の時代に読みやすい配慮、データの正確性やルビ・索引の付与など、そうゆう部分には大いにこだわりました」 京極さんの、著者への敬意、読者への配慮、妖怪・幽霊への熱い思いが伝わります。 |
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「本は売れないと絶版になってしまうもの。手に入らなくなるとおしまい。だから本は買ってなんぼ! 苦労してでも買ってほしいものだよね」と京極さん。
「本の楽しみは中身だけじゃない。新しい文庫本をきっかけに、ぜひ原典や初版本もあたってみると、さらに面白いと思う。装丁、製本、判型、紙質が異なれば、それはまた別の本としての味わいがある。散歩がてら古本を探すのも楽しいですよ」
作家として、また古書を愛する者としての”本への思い”が溢れる、神保町ならではのトークショー。最後は参加者全員に、天野さんのオリジナルポストカードをプレゼント! さらには、ゲスト3名のサイン本が購入できる特典付きで、大満足の2時間でした! |
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▲会場には20代の若い女性の姿も多く見られます。ゲストがすぐ目の前です! |
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▲和服にトレードマークの手袋姿の京極さん。 |
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▲中公文庫BIBLIO「〈異〉の世界シリーズ」。色とりどりの装丁も目を惹きます。 |
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▲「漢字一文字」が書かれた京極さんのサイン。 |
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▲天野さんのポストカード。 一枚はこの日のための描きおろし! |
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